520301212 リサナウト・誓約・クロノス 誓約されし事象の炎斧
リサナウトの活躍で 確かに隊の戦闘は有利に運んでいた
【リサナウト】 今回の任務も完璧だったわね! ねぇ、当主様 そうでしょ?
うん… とマスターは頷くが あまり快くない様子だった
【リサナウト】 …私の時間操作が そんなに嫌なの?
努力しなくても勝利が 確定してしまうのは よくないと思う…とマスター
【リサナウト】 私にできることは これしかないのに…
そんなときのこと… とある姫が魔獣に負けて 拠点へと戻ってきた
どうやら攻めるべきタイミングで 攻めきれず、魔獣の攻撃を食らい 負傷してしまったようだ
【リサナウト】 …そんなに落ち込まないで 大丈夫よ
そんなキル姫に、 リサナウトは優しく声をかける
【リサナウト】 その失敗はなかったことに してあげる!
【リサナウト】 私の力で時間を巻き戻して あなたの勝利を 確定事象にしてあげるわ!
リサナウトのその提案を マスターは慌てて止めた
失敗したからといって時間を戻して なかったことにするのは よくないよ、と
【リサナウト】 どうしてよくないの?
そんなことを繰り返してしまったら この隊は弱くなってしまうよ とマスターは懸念していた
【リサナウト】 …なるほどね あなたの言い分も一理あるわ
【リサナウト】 …だけど、世界を救う そんな果てのない理想に辿り着く ためには悠長に構えていられないの
【リサナウト】 よりよい未来に いち早く辿りつくには、 成功を積み重ねていくのが近道よ
【リサナウト】 そうじゃないと… いえ、そのために私は…
どこか気が急いているような リサナウトの様子に、マスターは 言葉を返そうとするが…
【リサナウト】 …当主様は私を認めてくれないの
どこか思いつめたように リサナウトがそう呟く
【リサナウト】 私はみんなのために こんなにがんばっているのに どうして…?
君の気持ちを否定するわけ じゃないんだ とマスターはリサナウトを気遣う
【リサナウト】 …私は、みんなの役に立ちたいの
【リサナウト】 見てなさい当主様 今回の任務も、 絶対に成功させてみせるから!
そう言うが早いか リサナウトはパッと駆け出す
まさかひとりで任務に…? と心配したマスターは 慌ててその後を追うのだった…
マスターの隊は 飛び出したリサナウトに追いつき 手早く彼女に加勢していく
待つんだ、リサナウト とマスターは彼女を引き留めた
【リサナウト】 どうしてよ 私は何も間違っていないわ
【リサナウト】 ひとつの失敗もしてないわ だから、私を認めてよ…
リサナウトが来てくれて 助かってることが沢山あるんだよ とマスターは伝える
【リサナウト】 …じゃあ、私の何がいけないの
失敗することが 全部、よくないとは限らないんだ とマスターは伝える
【リサナウト】 失敗した方がいいってこと?
そういう意味じゃないよ とマスターは首を振る
ほら、あれを見てごらん とマスターは とある姫の戦闘を指し示した
【リサナウト】 あの姫は… さっき任務に失敗した姫じゃない
【リサナウト】 見てるだけじゃなくて 誰かが加勢した方がいいわ
【リサナウト】 じゃないと… …あっ!
【リサナウト】 ほ、ほら! 魔獣の反撃を もらってしまったわ!
【リサナウト】 いい?当主様 あの姫の周辺の時間を巻き戻して 勝利する未来を確定してみせるわ!
待って、リサナウト とそれを止めるマスター
【リサナウト】 どうして?
あの姫はまだ立ち上がれる まだ戦えるんだ とマスター
【リサナウト】 …っ! そんな苦労しなくていいでしょう!
リサナウト! 彼女を信じて、見守るんだ とマスターはリサナウトの手を掴む
【リサナウト】 …信じる、だけ? 力は使わないの?
うん、大丈夫だよ とマスターは頷いて そのキル姫を見守った
負傷して地に膝をついた キル姫だったが、次の瞬間には 武器を手に立ち上がっていた
前回の失敗を生かし 今度こそはと武器を振るって 魔獣の群れを押し返していく
【リサナウト】 …………っ!
【リサナウト】 …そう、勝ったの
【リサナウト】 私が時間操作しなくても あの子は立ち上がって、勝てたのね
彼女は前の失敗を活かして 勝つことができたんだよ と
【リサナウト】 より力強く立ち上がって、 勝てたのね
【リサナウト】 …当主様、私は…… 私は、みんなの役に立ちたかった
【リサナウト】 でも私が時間操作をしていたら あの姫はあんなに力強くは きっと立ち上がれなかったわね
【リサナウト】 …私の失敗だったわ、当主様 無理に成功させていたのが… 私の失敗
そう言って、リサナウトは 悔しそうに俯いた
かとマスターが心配すれば 今度はパッと顔を上げて 明るい笑顔を向ける
【リサナウト】 この失敗を 過去に戻ってやり直して きていいかしら?
り、リサナウト…っ!? と慌てるマスター
【リサナウト】 …なんて、冗談よ 本気にしないで、当主様
【リサナウト】 …ねぇ当主様 あなたなら、たとえ私が失敗しても きっと信じてくれるんでしょう?
【リサナウト】 私ならより力強く 立ち上がれるって
もちろんだよ とマスターは力強く頷く
【リサナウト】 そう言ってくれると思っていたわ… …ありがとう、当主様! よーし、見てなさい
【リサナウト】 今の私は、過去の私よりも きっと力強いわ!
【リサナウト】 だから今の私なら 今までの私ができなかった 技も使えるはずよ!
そう言って リサナウトは斧を振り上げ 魔獣へと疾駆する
【リサナウト】 これが私の… 『誓約されし事象の炎斧』!
すごい…! 魔獣をまとめて蹴散らすその一撃に マスターは感嘆の声を上げていた
【リサナウト】 …聞いて、当主様 今までの私は闇雲に 力を使い続けてきたわ
【リサナウト】 取りあえず時間を戻せば いいと思っていたの
【リサナウト】 だってほら 誓約を交わした 私の時間操作って完璧だから
落ち込んでいるかと思えば リサナウトはそう言って どこか自慢げに胸を張った
【リサナウト】 今日の経験を経て 私がどう動くべきか 少しだけはっきり見えたかもしれない
少しだけはっきり…? つまり、どっちだろう とマスターは困惑する
【リサナウト】 今日の経験を経て 私はどんどん強くなるってことよ
【リサナウト】 言っておくけど これは予言じゃないわ 確定事象の報告に過ぎないの!
と自信満々に微笑むリサナウト
【リサナウト】 それもこれもあなたのおかげ と言っても過言ではないわ ありがとう、当主様
そう言って笑顔を向けるリサナウト 素直になるのは不慣れなのか どこか気恥ずかしそうにしている
何はともあれ リサナウトはひとつ成長したようだ
どういたしまして とマスターは 微笑み返すのだった
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