530181211 フォルカス・神令・ヘル 消えない痛み
【フォルカス】 みなさん!
【フォルカス】 聞いて下さい!!
彼女の名は、 フォルカス・神令・ヘル
先日、入隊したばかりの姫だ
【フォルカス】 敵は右手から攻めて来ます! 迎撃準備を!!
実力の高い彼女だが、 前線に立って戦うというよりは、 味方を見守る指揮官のような存在
【フォルカス】 大丈夫! みなさんの戦闘力なら、 必ず勝てますから!
彼女の正確な指揮で、 キル姫たちの特徴が活かされ 隊は見事、勝利を収めるのだった
ありがとう 彼女に声を掛けるマスター
僕より君の方が 指揮官に向いてるんじゃない? と笑いながら、尋ねる
【フォルカス】 指揮官に向いているというより、 個性的な子たちに振り回されるのには 慣れているだけです
…と、笑顔で返す彼女
でも、どうして僕やみんなのために、 そんなに一生懸命してくれるの? と、マスター
【フォルカス】 ……
少し考えた後、彼女が口を開いた
【フォルカス】 それは…コマンドキラーズの まとめ役をしていたからだと 思います
【フォルカス】 今もそうする必要はないのですが… 癖として残っているのでしょう
【フォルカス】 どうしても 過保護になってしまうのかも 知れませんね
そう答える彼女にマスターは、 それだけじゃないと思うけど と告げる
【フォルカス】 どういうことです…?
元々、君が持っている 優しさもあるんじゃない? 微笑み、答えるマスター
【フォルカス】 ……そんなことはないと思います
【フォルカス】 だって、私は……
【フォルカス】 い、いえ……
何かを言いかけたが途中でやめ、 彼女はその場を後にした
数日後――
フォルカスが言う過保護な一面は 日常生活でも表れていた
【フォルカス】 もう朝ですよっ、 寝ぼけているのですかっ?
【フォルカス】 ……はあ……仕方ありません 早く顔を洗ってきてください。 朝食の準備は、私がしておきますから
寝ぼける姫には、 食事を用意してあげ…
【フォルカス】 床は水拭きした方が 綺麗になりますよ?
【フォルカス】 ……はあ ……仕方ありません 私がしておきます
また、掃除が苦手な姫の代わりに、 雑巾がけをしてあげたりと、 なかなかの過保護ぶりだった
【フォルカス】 ほら、早く準備してきてくださいっ ここは私がやっておきますから
一人で忙しく 動き回っているフォルカス
…が、それは若干 押しつけがましいところもあり、 中には辟易気味の姫もいるのだった
そんな彼女に 大丈夫?あまり無理しないでね、と マスターが声を掛ける
フォルカスは、 姫たちの態度には気づきもせず、
【フォルカス】 ふぅ…慣れてると言いましたが、 やっぱり“まとめ役”って大変ですね
と、笑顔でこぼしている
だがマスターは、 “あること”が気掛かりだった
また別の日――
【フォルカス】 …………
戦闘の訓練をする姫たちの様子を、 一人で見ているフォルカス
過保護で世話焼きの彼女だが、 こと戦闘の特訓に関しては、 一切仲間に介入しない
隊の姫たちから誘われても 断るくらいだ
【フォルカス】 ………!
そんな彼女の元にやってきて、 マスターが尋ねる どうして、一緒にやらないの?と
【フォルカス】 ………
彼女はクールな表情と、 冷静な口調で返す
【フォルカス】 強くなるために、 誰かの力は必要ありません
【フォルカス】 それに…
【フォルカス】 私はバイブスというものも 認めてはいませんから
クールに答える彼女に、 マスターは以前から気になっていた “あること”を告げる
いつも、みんなの まとめ役のような存在だけど…
僕には君がどこか 一歩引いているように見えるんだ …と
確かにフォルカスは 他の姫たちの手伝いを 自ら進んでやっている
しかし、誰かを手伝っている以外で 他の姫と一緒にいるところを 見たことがなかった
【フォルカス】 …!
仲良くなりたいんだけど、 あと一歩踏み込んでいない、
いや踏み込めないんじゃないかなって とマスター
【フォルカス】 ………
【フォルカス】 …どうして……それを…
なにか心当たりがあるんだね? フォルカスの目を見据え、 マスターが尋ねる
【フォルカス】 …それは
彼女が己の過去を語り始めた
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