540221212 イチイバル・神令・オーディン 探していたんだ
数日後
【イチイバル】 ………
あれからもマスターに張り付いて、 観察を続けているイチイバル
そんなある日、 彼女は戦闘において、 また難しい任務を成功させた
すごいね、と彼女を褒めるマスター
姫たちも、 イチイバルにはかなわない、別格、 住む世界が違う、など称賛の嵐だ
【イチイバル】 ボクは天才美少女 イチイバルさんだからね、 ドヤッ
口ではそう言うものの、 マスターは彼女になにやら 違和感を覚えるのだった
数日後――
【イチイバル】 ………
どこか寂しそうな様子で 一人で佇む彼女の元に、 マスターがやってきた
【イチイバル】 …おや、 ボクに会いに来てくれたのかい お兄さん
先ほどまでの寂しげな表情とは 変わり、いつもの表情に戻る イチイバル
マスターは彼女に尋ねる みんなの前では飄々としてるけど、 一人の時は寂しそうだね?と
【イチイバル】 …!
【イチイバル】 今日はお兄さんが、 ボクを観察してたのかな?
【イチイバル】 ボクが寂しそうって…
【イチイバル】 なんで、そう思ったんだい?
珍しく、少し驚いた様子で 尋ねてくる彼女
なんとなく、そんな気がして と、マスターは答える
【イチイバル】 なんとなく…か 意外と鋭いんだね やっぱり、お兄さんは面白いな
そう言うと、 彼女は静かに語り始めた
【イチイバル】 ボクが寂しそうに見えたのなら、 それは…
【イチイバル】 孤独だからかも知れない
【イチイバル】 普通、人は占いをしてもらったら、 幸せな未来を見たがるものだろ?
【イチイバル】 でも、お兄さんは違った
【イチイバル】 未来なんて、そもそも 思い通りに行かないもの、 だからこそ面白い…って言った
【イチイバル】 つまりは、思い通りに行かないから 自分で変える… それが面白いってことだよね?
そうだね、 と頷くマスター
【イチイバル】 でも、その考え方は、 なかなか人には理解されない
【イチイバル】 戦いばかりの今… 未来を変えることがどんなに大変か、 みんな知ってるからね
【イチイバル】 だけど…ボクはこう思うんだ
【イチイバル】 未来は… 絶対に自分の力で変えられるって
天才肌の彼女は、 本当に出来ると信じているのだろう
だがそれゆえに、 誰からも理解されず孤独だったのだ
【イチイバル】 でも、初めて…
【イチイバル】 話が合うかも知れない人が 現れた
【イチイバル】 それがキミだ
興味深い観察対象だから 僕を付け回していた…
そう思っていたが、彼女は 対等に話せる友達が欲しかったのか… と理解するマスター
【イチイバル】 初めて出会ったよ 同じ考えを持つ人に
そう言う彼女に、 マスターは答える
でも申し訳ないけど、 僕は君のような天才じゃないよ …と
【イチイバル】 …!
【イチイバル】 それはやっぱり… 分かり合えないってこと?
表情こそ変わっていないが、 その声には寂しさがこもっていた
――と、その時、
【イチイバル】 …!
2人の前に、敵の大軍が出現した
【イチイバル】 ……やれやれ
【イチイバル】 遊んで欲しいのかい? 子犬さんたち
武器を取り出す彼女
だが、いくら天才の彼女とは言え、 この数を一人で相手にするのは 厳しいだろう
――しかし、彼女は言った
【イチイバル】 お兄さん、これから起こる 二人の未来を 占ってあげようか?
マスターは答える
ううん、大丈夫 もし『勝てない』と占われても、 僕は信じないからね…と
【イチイバル】 ………
【イチイバル】 フフフッ
【イチイバル】 なんだ、やっぱり気が合うじゃないか
そう言うと武器を構え、 敵に向かって突撃するのだった
【イチイバル】 はああ!
とてつもないスピードで、 次々に敵を打ち倒していく彼女
だが……
【イチイバル】 …ふぅ、きりがないな
やはり敵の数が多過ぎる
――と、その時
【イチイバル】 !?
マスターが彼女に 戦闘の指示を送った
【イチイバル】 自分のこと、 天才じゃないとか言ってたけど…
【イチイバル】 お兄さんの声は、 ボクの頭に… 心にすっと入ってくる
【イチイバル】 それってすごいことだ
【イチイバル】 お兄さんを信じてみるよ
マスターを “分かり合える対等の仲間” と認めた時、
彼女の中で新たな力が目覚めた
【イチイバル】 新技『虚を衝く神の狂光』
そして、 見た事もない大きな力で 一気に敵を葬り去るのだった
【イチイバル】 ボクが本気を出したら こんなものだよ、 ドヤッ
戦闘後――
草原で隣同士、 寝転がっているイチイバルとマスター
【イチイバル】 ………
だが彼女は、 特になにを語るわけでもない
【イチイバル】 ………
ただ、じっと空を眺めている
だが、その顔は心なしか 安心感に包まれているように見える
なにを考えているの? 尋ねるマスター
【イチイバル】 ………
――と、 彼女がこちらを向き、 珍しく頬を少し赤くして言った
【イチイバル】 キミと過ごす時間は、 沈黙さえも心地いいんだ
【イチイバル】 面白いか退屈か…
【イチイバル】 そんなことを考えることも ないくらいだよ
【イチイバル】 ボクがずっと探していたのは、 この温もりだったのかな…
彼女の瞳には、 初めて心を許せる友を見つけた喜びに 満ちているようだった
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