60221202 ツクヨミ 『クレイジードールズ』
【ツクヨミ】 ふぅ~、これで全部かな?
ツクヨミが額の汗をぬぐいつつ マスターの方へと振り向く
【異族】 グギギ!!
【ツクヨミ】 ほへっ!?
【ツクヨミ】 もう… 邪魔っ
その苛烈な攻撃に面食らった マスターだったが、ツクヨミの 身を案じて駆け寄った
【ツクヨミ】 ぁ——ごめん、ごめんね
【ツクヨミ】 スサノオくん……ッ!
…彼女はその場にしゃがみ込み 人形のひとつを、悲し気に 撫でていた
その人形の腕には傷が入り 中の綿が飛び出してしまっている
【ツクヨミ】 わたしが…わたしが 油断しちゃったから…
【ツクヨミ】 どんなことがあっても… 絶対、直してあげるから! 待っててね、スサノオくん……!
痛ましささえ感じるその声音に マスターは声をかけることさえ 出来なかった…
【ツクヨミ】 ぜんぜん、ダメ…… お人形の材料、見つからない…
異世界ゆえの不便か 彼女の人形と同じ素材がなかなか 見つからない様子だった
【ツクヨミ】 …でも、あきらめないから すぐには無理かもしれないけど ちょっとずつでも、必ず!
そう言う彼女の表情は険しく 余裕が消えていた
あの人形は彼女にとって それだけ大切なものであり 心の支えでもあったのだろう
それを確信したマスターは 決意と共にひとり 街へと向かった…
【ツクヨミ】 あれ〜 マスター、どこ行ったんだろ…
街はずれでツクヨミが マスターを見つけたとき
【異族】 グギャギャ…グギャ!
【ツクヨミ】 や〜っと見つけた〜
【ツクヨミ】 まったくもうっ、ひとりで ふら〜っと出掛けちゃうんだから
【異族】 グギャ…ギギギ…!!!
【ツクヨミ】 うるさいな… ちょっと待っててよ まったく…
【ツクヨミ】 言いたいことは いっぱいあるんだけど… 今はこの子達の相手をしないと
【ツクヨミ】 ちょっと待っててね、マスター すぐに片づけちゃうから!
【ツクヨミ】 で、どーいうことなの〜? マスターがひとりで行動したら 危ないってわかってたでしょ?
ツクヨミは笑顔だったが その表情には非難の色が 見える気がした
なので、素直に胸に抱いていた “荷物”を彼女に差し出す
【ツクヨミ】 ん〜? これな〜に?
【ツクヨミ】 え?これって!
マスターから受け取った包みを開けて ツクヨミが驚きの声を上げる
【ツクヨミ】 これ、わたしのお人形で使ってるのと ほとんど同じ布っ!?
【ツクヨミ】 あんなに探しても、 見つからなかったのに?
選択肢:
- 餅は餅屋ってね → select_label_01へ
- 探し物は得意なんだ → select_label_02へ
- けっこう大変だった → select_label_03へ
あんなに探しても、 見つからなかったのに?
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【ツクヨミ】 わ、わたしも頑張って探したのに〜
select_label_02:
【ツクヨミ】 そうなんだ!ありがとう!
select_label_03:
【ツクヨミ】 う…ごめんね〜
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【ツクヨミ】 そっか… マスターはわたしのために…
【ツクヨミ】 でも、どうしてひとりで? え? …私事だから みんなに迷惑かけたくない?
【ツクヨミ】 …あなたって、ヘンな人
【ツクヨミ】 でも、ありがとう これでスサノオくんを 直してあげられる…
彼女はそう言うと、 大事そうにその生地を抱きしめる
それと同時に ツクヨミの身体から光がこぼれ あたりを優しく包み込んでいく
光は次第に収束し、 彼女の腕の中にあった人形— スサノオくんへと流れ込んでいく
それはツクヨミが新たなスキル 『クレイジードールズ』 に覚醒した瞬間だった
【ツクヨミ】 スサノオくんも、 この布が気に入ったみたい
【ツクヨミ】 ね、マスター ひとつだけ、お願いがあるの
【ツクヨミ】 この子を直すの、 あなたも手伝ってくれる?
マスターがもちろんと頷くと ツクヨミは優しく微笑んだ
その笑顔はこれまでの緊張や不安から 解き放たれた、心からのもの— 少なくともマスターには、そう見えた
【ツクヨミ】 できた〜っ! やったよ、マスター! スサノオくん完全復活〜!
笑顔と共に、ツクヨミが人形を こちらに掲げてみせる
そこには、もはや傷があったことすら 分からないくらい、完璧に修繕された スサノオくんの姿があった
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